2010年04月

2010年04月02日

LOVE103[影踏み]

「ほら踏んだ!」

天気の良い日には
わあわあ言いながら
影を踏みあった

子供の頃
幼心にも
影を踏まれることに
恐怖にも似た気持ちを
持っていた

「でもなぜ?」

影なんて踏まれても
何の痛みも感じないのにさ

「それはね」

静かに話を聞いていたじいさんは
口をとんがらせた子供達に
諭すように言うのだった

「昔は人も
ながーいしっぽを
持っていたからだよ」

kimihiro3 at 11:24|Permalink  

LOVE102[頑固親父]

僕らが子供の頃には
町内に"がんこじじい"と呼ばれる
明治生まれの気骨ある爺さんが居た

「オキヤのオヤジは恐いぞ!」
「おれもこないだ怒られたぞ」

もちろん叱られる原因は
僕らにあったのだろうが
その店で買い物をする時は
僕らは僕らなりに
その"がんこじじい"の機嫌を損ねないよう気を遣いながら
覚悟を決めて店に出向いたものだ

「おるおる」
「おれらー、この前お釣りが間違えちょったけんど、よー言わんかったぞ」
「わー、こっち見ゆーぞ!」

取り立てて用もないのに
"恐いもの見たさ"
その頑固親父と視線が合ったら走って逃げることが
一時僕らのトレンディーとなった

今はもう
その爺さんがどうなっているのか
消息も知らないが
いつの日か僕も
『昭和生まれの頑固親父』
と呼ばれるような
気骨ある人生を送ってみたい

kimihiro3 at 11:22|Permalink  

LOVE101[?]

銀色の"?"(クエスチョンマーク)

自分が小学校低学年だった頃
まだ、銀色のクレヨンが珍しくって
それを持っていた友達がうらやましくって仕方なかった

そんなとき、確か道端で銀色のクレヨンを拾い
うれしくて、うれしくて
何かを書かずには居られなかった

そこでガラス戸の一枚の磨りガラスに
自分が覚えたばかりの"?"を書いた

もう四十年ほど経つのに、まだそれが残っている

祖父の家が土佐山田町の中町にあった頃の話だが、
旭町に移った後も同じガラスが新しい家に使われていた
(そのころのガラスは同じような規格で、結構高いものだったのだろう)

僕は何年かぶりに、当時の友人に会ったような思いに駆られる
「やあ、元気だった?」

kimihiro3 at 11:18|Permalink  

LOVE100[蛍]

無抵抗なまま
生きられない環境に
追いやられてしまうものたち

蛍。

きれいにコンクリートでコートされた川には
次の年から彼らの姿は見られなくなってしまう

(人のために犠牲になる生物の
なんと多いこと!)

だが、密やかに、まだ
彼らの住める川があったのだ

不思議な川だ。

真っ暗な空中に
光玉が乱舞し
川面に滲む光

ちょろちょろと
絶え間なく続く水音

僕の周りで厳かな時が過ぎていく

kimihiro3 at 11:16|Permalink  

LOVE99[家]

いろいろ転々としては来たけれど
この家で一番長い時間を過ごしてきた

僕らが兄弟として時空を共有したところ

最初に家が死んだ
(火災で全焼)

次はおまえだった

おまえは素早く駆け抜けていったけれど
僕にはもう少し時間が残っているようだ

新世紀!
これからは自分のために生きてみようかと思う


kimihiro3 at 11:14|Permalink