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2018年07月18日

LOVE164[浪人生(海流86号より)]

 自分が色んなことに手を出してるため、色んな人達が周りには居てくれる。絵を描く人、ピアノを弾く人、ギター弾いて歌う人、テニスやる人、数学やる人、詩を書く人…。絵を描く人は「今年は展覧会に一緒に出そう」と言ってくれてるし、ピアノを弾く人は、僕のまだ稚拙なトランペットの伴奏を、特に嫌とも言わずにしてくれるし、ギター弾いて歌う連中は、一緒にライブやったり、酒飲んだり、テニスやる人は日曜ごとに遊んでくれるし、同じ学校で数学やってる人は、「これ解いて見て!」と時々面白そうな問題を持ってきたり、京都の川床で一緒にワーワーとやってくれたりする。詩を書く人は言わずもがなだが、そんな中で、予備校で去年から教えている生徒の中に、ちょっと変わったのが居る。
 予備校では自分は、物理の二次対策を担当させられていて、授業で初めて彼を見た時、(何浪生?)って思ったが、彼は彼で自分の授業を『お手並拝見』的に見ていたようだった。というのも、周りから得た信頼できる情報によると、某国立の有名大学の院を出てる(自分は院は行ってない)ということなのだ。今考えると『なるほど…』である。それでも、いつの頃からか、特に社交的でもなさそうな彼が、自分の授業後に、後片付けが終わるまでずっと待ってくれて居て、授業の感想や問題に関する話等を、七階から階段使って話しながら、職員室のある二階まで一旦降り、また次の授業のある階まで戻る(これははじめは気付かなかったが…)というのが常となっている。
「院で何の研究してたん?」
「物性です。先生は?」
「一応、流体。電磁流体で、プラズマを磁場で閉じ込められたら、実験室で核融合もできるし、核も平和利用できるから…」等々。物理については、彼の方が自分よりは長く研究してるから、特殊相対論や量子力学といった内容については詳しいようだ。
「なんで受験し直すん?お前はあんまり医者は向いてないような気がする」
「基礎医学をやりたいんです」
「ああ、臨床じゃなくて、研究の方やったら良いかもしれん。けど、まず大学に通らないかんね」
今のところ彼とは予備校の物理の授業以外の接点は無いが、いつか彼が医学生になったら、酒を酌み交わすこともあるのかもしれない。
 どんな場面でも、自分の中にある向上心とプライドが、(この世の中も捨てたもんじゃない!)と思えるようにしてくれてるのかも…。

kimihiro3 at 17:10│ 日記 
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